きよすクリニック 診察室から

現実を見ない医療  No.30
 「アトピー性皮膚炎 患者1000人の証言」(子どもの未来社刊)という本を読んでみました。

 1000人という、多数のアトピー性皮膚炎の患者さんから得られたアンケート結果をみると、患者さんの実情が伝わってきます。
 著者自身もアトピー性皮膚炎の患者さんであるため、説得力がありますね。
 アトピー性皮膚炎の患者さんや、アトピー性皮膚炎に関心のある方は読んでみてはいかがでしょうか。

 1000人の患者さんのアンケート結果と著者自らの体験から得られる情報だけでも十分に有用なのですが、今の医療にとって非常に重要だと思われるくだりが、この本の最後の方に書かれています。

 かつての主治医だった、標準治療の中心的な立場にいた皮膚科医と著者との再会の場面・・・
「実は、プロトピックは使えなくなってしまい、ステロイドに戻ったのですが、やはりこちらも使いこなせなくて・・・・・・」このあたりまで言いかけたときだったかと思います。元主治医は、まるで私が突如、存在しなくなったかのように、もう一人の先生に向かって、全然ちがう話をはじめたのです。それは私があたかも突然、透明人間になったかのような、そんな一瞬でした。・・・」

 現実を話しても無視される、ということは私も経験したり耳にしています。

例えば、

1.ある医療機関に代務に行き、褥創患者さんにガーゼが当てられていたり、創傷治療に消毒やガーゼによる乾燥させる治療が行われていたのを見て、私が湿潤療法やラップ療法が有用だと話しても、まったく反応なし・・・

2.慢性腎不全の低たんぱく食による食事療法が透析を遅らせるのに有効なことは、多くの患者さんの実例から明らかであり、大学病院や大病院でなく、クリニックレベルでも十分栄養指導が可能なのに、大多数の医療機関で行われていないし、患者さんが希望しても行ってくれない・・・

3.低たんぱく食による食事療法でデータが改善したのを見て、「どうしてよくなったんだろう???」って腎臓病の専門医から不思議に思われたという患者さん・・・
 
4.せっかく低たんぱく食の食事療法が効果を示していたのに、事情があって病院に入院したところ、大病院にもかかわらず、低たんぱく食の設定がなく、患者さんが低たんぱく食の弁当を持参して食べていた・・・

 患者さんは、今までに見聞きした治療法でなくても、きちんと説明すると比較的容易に受け入れてもらえるのですが、医療者のほうが、自分が関心のない治療や自分の意見と異なる考えを受け入れることが難しいようです。
たとえ、その治療法が優れていたとしても・・・
2010/10/28



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